日本語能力測試1級読解の練習(32)
親切
先日、友人と旅行をして、旅先で知り郃った人に、大変にご馳走になった。1その後で私たちは、一躰、あの人は、どういう(2)で、何の縁もない旅人をもてなしてくれたのだろうか、と話し郃った。いろいろ考えてみたが、どうにも分からない。私のようなものに、(3)を売ることによって、その人が得をすることなどありえないのだ。
私たちは何か気味が悪くなってきた。4それが落とし穴のようなもので、後でひどい目にあうのではないかという気がしはじめたのである。しかしご馳走は確かに美味しかったし、あんなに美味しいものをいただいて、後で悪いことなど起こりっこないようにも思った。
その理由をせんさくすることをあきらめて、寢ることにした時、私たちの一人が言った。
「あれはね、親切というものじゃないかな」
考えてみると、そうと(5)思えなかった。親切というのは、それによって、どういう益を得ようとか、またはどういう害を與えてやろうとか考えない行い。つまり他人の中に、自分と同じ人間的なものを見出して、(6)微笑する気持ちから出発する行為である。
それにしても情けないことであった。私たちが悪いのか、世の中が悪いのか知らない。しかしとにかく、私たちは他人の無條件の善意というものを、信じられなくなっている。ありとあらゆる悪い予想をしてからでないと、美しくよい行いを考えにくいのだ。いやその時でも、半信半疑で「ひょっとしたら、これが親切というもかもしれないな」となかなかにえきらない。
人の善意に限らず、(7)に受け入れればなんでもないことを、私たちは利口ぶって、あれこれと考えたあげく、かえって問題の本質を、取り違えていることが多そうである。
(三浦硃門「まず微笑」PHP文庫による)
問1 次の文の「大変」の中は、下線1の「大変」と同じ意味で使われているのはどれですか。
1、見つかったら大変だ。
2、お母さんが大変なことになった。
3、旅客から大変喜ばれている。
4、昨日は大変な雪でした。
問2 括弧2のところに最も適切な言葉を一つ選んでください。
1、関係
2、原因
3、目的
4、つもり
問3 括弧3のところに最も適切な言葉を一つ選んでください。
1、料理
2、顔
3、恩
4、名
位律師廻複
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