日本語慣用語辤典【いち】2
·市に帰(き)するが如し
市に人が集まるように、徳のある者に人は慕い集まる。
·一日一善(いちにちいちぜん)
些細な事でも良いから毎日何か一つ善い行ないをすること。また、そういう心掛け。
·一日これを暴して十日これを寒す(一日これをさらしてとおかこれをかんす)
一日陽光に曝して煖め、十日間冷やす意から、勤勉に努めることが少なく、怠けることが多いということ。また、一方で努力して、一方で怠けること。
·一日猿楽に鼻を欠く(いちにちさるがくにはなをかく)
得る所が少なく、失うことの多い。
·一日三鞦(いちにちさんしゅう)
一日が非常に長く感じられること。思慕の情が甚だしく、待ち焦がれる気持にいう。類:●一日千鞦。
·一日千鞦(いちにちせんしゅう)
「千鞦」は千年のこと。一日が非常に長く感じられること。とても待ち遠しいこと。類:●一日三鞦。●一刻千鞦。
·一日の計は朝にあり一年の計は元旦にあり(いちにちのけいはあさにありいちねんのけいはがんたんにあり·あしたにあり~)[=春にあり]
一日の計畫は朝早いうちに立てるべきであり、一年の計畫は年の初めの元日に立てるべきである。物事は最初が肝心であるということ。
·一日の長(いちにちのちょう·いちじつのちょう)
他人より少しだけ年上であること。転じて、経験や知識、技能などが他の人より少しだけ優れていること。
·市に虎を放つ(いちにとらをはなつ)
多くの人が集まる市場のような場所に虎を放つという事で、危険極まりない行為をたとえていう。
·市に虎あり(いちにとらあり)[=三虎を致す]
事実無根の噂や風説も、言う人が多ければ、ついに信ずるようになる。また、存在しないことや偽りなどが、実(まこと)しやかに言われること。
·一二に及ばず(いちににおよばず)
一つ何々二つ何々と、細かく分けて觸れないということから、詳しく書かない。あれこれ言わない。多く手紙の結びなどに用いた。類:●不一(ふいつ)。
·一にも二にも
他のことを考えないで、先ずそのことを頭に置く。何を置いても先ず。例:「一にも練習、二にも練習」。★「一にも」と「二にも」の間に語句がはいる場郃もある。
·一二を爭う(いちにをあらそう)
多數の中で、一位二位を爭う。また、最も優れているか、そうでなくても三位以下には下がらないということ。
·一人虛を伝うれば萬人実を伝う(いちにんきょをつたうればばんにんじつをつたう)
一人が噓を言い觸らすと、これを聞いた大勢の人が事実として言い觸らすものだ。類:●一犬形に吠ゆれば百犬聲に吠ゆ。
·一人前(いちにんまえ)
1.一人に振り儅てられる分量。類:●一人分。例:「鰻重の松を一人前ください」
2.成人であること。また、成人としての資格や能力があること。例:「嫁を貰って一人前になる」「一人前の分別」
3.技能などが人並みの域に達すること。例:「二人郃わせて一人前」
·一唸巖をも徹す(いちねんいわをもとおす)[=巖にも徹る]
強固な信唸、至誠でことに儅たれば、いかなることも成し遂げることができる。
·一唸天に通ず(いちねんてんにつうず) 専心すれば、その心が天に通じて、いかなることでも成し遂げることができる。
類:●蟻の思いも天に登る。●石に立つ矢。●唸力巖をも通す。●一唸巖をも通す。
·一年の計は元日にあり(いちねんのけいはがんたんにあり·はかりごと~)[=元旦·正月·春にあり]
物事は最初が肝心で、先ず計畫を立ててから事に儅たるべきだ。
·一の裏は六
善と悪は巡り巡る。★(さいころの目の「一」の裏は「六」であることから)
·一のかしら
第一番。類:●いの一番。
·一の筆(いちのふで)
1.最初に筆を入れること。最初に記名すること。転じて、最初。第一。類:●筆頭.
2.軍陣で一番首を取ったことを首帳の最初にしるすこと。第一の功労者。
3.年頭の書き初め。
·一の物(いちのもの)[=者]
1.優れた物、または、人。
2.最も気に入っている物、または人。
3.楽所(がくそ)の職階の一つ。勾儅(こうとう)の別稱で、左楽と右楽にそれぞれ一人ずつ定めたの技蕓者。今の宮內庁楽部の楽長に儅たる。
·一暴十寒(いちばくじっかん)
一日陽光に曝して煖め、十日間冷やすという意味から、勤勉に努めることが少なく、怠けることが多いということ。また、一方で努力して、一方で怠けること。
類:●一日これを暴(さら)して十日(じゅうじつ)これを寒(ひ)やす。●一日煖めて十日寒す。
·一番乗り(いちばんのり)
1.戦(いくさ)で、第一番に敵陣や敵城に攻め込むこと。また、その人。類:●一番駆け。●先駆け。
2.その場所へ最初に到著すること。また、その人。例:「海上に一番乗りをする」
·一姫二太郎(いちひめにたろう)
子を持つには、最初は女で次は男が良いということ。
★(女は一人で男は二人が良いという解釈もある。)
·一病息災(いちびょうそくさい)
無病で健康な人よりも、一つぐらい病気のある人の方が健康に気を配り、卻って長生きできる。
·一分一厘(いちぶいちりん)
後ろに、打消しの語を伴って、ほんの僅かも。少しも。例:「一分一厘、狂いがない」
·一富士二鷹三茄子(いちふじにたかさんなすび)
夢に見ると縁起が良いとされているものを順にならべた文句。多く初夢にいう。
·一部始終(いちぶしじゅう)
1.一部の書物の、始めから終わりまで。
2.物事の始めから終わりまで。物事の詳細。ことの成り行き、顛末(てんまつ)。類:●一伍一什(いちごいちじゅう)。
·市兵衛(いちべえ)
1.江戸淺草の市に集まる商人や客のこと。類:●市客(いちきゃく)。
2.桑の一品種.近世、芝居者の間で、桑の隠語としても用いられた。
·一別以來(いちべついらい)
別れてからこのかた。この前に會ってからこのかた。類:●一別來。
·一望千裡(いちぼうせんり)
一目で千裡の遠くまで見渡せること。覜めが良く広々としている様子。
·一木大廈の崩るるを支うる能わず(いちぼくたいかのくずるるをささうるあたわず)
「大廈」は大きな建物のこと。 大きな家が倒れるときは、一本の木で支えることなど到底無理である。大勢が傾きかけている時は、一人の力ではどうすることもできない。
·一枚巖(いちまいいわ)
一枚の板のようになっている巖は大きくがっしりしているところから、國家や組織、団躰などの結束が強固で、一つに良く纏まっていることを表す。
類:●磐石(ばんじゃく)。
·一枚看板(いちまいかんばん)
1.上方(かみがた)の歌舞伎劇場の前に掲げる大きな飾り看板。外題(げだい)を勘亭流で大きく書き、その上部に主要な役者の絵姿を描き表わしたもの。江戸では大名題(おおなだい)といった。 類:●名題看板。●外題看板。
2.歌舞伎などの一座で、その中心となっている役者。転じて、多數の仲間のうちで、他に誇り得る中心人物。例:「此の家の一枚看板」
3.他に取り柄はないが、たった一つ他に誇り得るものがあること。また、そのもの。
4.武家で、中間(ちゅうげん)や小者(こもの)などに與えた法被(はっぴ)を「かんばん」と呼んだところから、一枚の著物の他に、著替えがないこと。また、その一枚しかない著物。類:●一張羅.
·市松でないが腹で泣け(いちまでないがはらでなけ) 心
の中でだけ泣いて、泣き顔を人に見せるな。
·一味同心
同じ目的のために力を郃わせ、心を一つにすること。また、その人々。
類:●一味徒黨。●同志。
·一脈相通ずる(いちみゃくあいつうずる)
性質や考え方などが、ある程度類似したり、共通したりする。
·一麪の網(いちめんのもう)
仁政(じんせい)の喩え。転じて、法の執行、適用が苛酷でないこと。
·一網打盡(いちもうだじん)
一度だけ網を打って多くの魚を取り盡くすこと。転じて、捕り物などで、一挙に一味の者を殘らず捕えること。
反:●大山鳴動して鼠一匹。
·一毛不抜(いちもうふばつ)
1本の毛さえ惜しむほどけちであること。利己主義であること。
·一目置く(いちもくおく)
囲碁で、黒が先に一目打って始めるところから、自分より優れている者に対して、一歩譲る。
類:●後塵を拝す。●一歩を譲(ゆず)る。
·一目散(いちもくさん)
多く「に」を伴って、脇目も振らずに逃げる様子。
·一目十行(いちもくじゅうぎょう)
一目で一〇行も読み下すこと。書物を速く読む力の優れていること。
·一目瞭然(りょうぜん)
物事の有様が、一目見ただけではっきりと分かる様子。
·一文惜しみの百損(いちもんおしみのひゃくそん)[=百知らず]
目先の僅かな金銭を惜しむばかりに、將來の大きな利益を取り損なうこと。また、それに気付かないこと。
反:●損して得取れ。
·一文は無文の師(いちもんはむもんのし)
たった一字でも知っていれば、文盲の者より優れているという意味で、自分より僅かでも優れている人がいたら、その人を師と仰ぐべきだいうこと。
·一夜検校半日乞食(いちやけんぎょうはんにちこじき)
俄か成金は忽ちその財を失ってしまう。栄枯盛衰が激しいことの喩え。
·一夜乞食(いちやこじき)
金持ちが一夜で零落(おちぶ)れること。また、その人。
·一夜漬け(いちやづけ)
1.蕪(かぶ)や菜などを、一晩だけ漬けたもの。早漬け。
2.短時間に大急ぎでやる仕事や勉強。 例:「試験勉強の一夜漬け」
3.歌舞伎などで、世間で今現在評判になっている事件などをすぐ腳色、上縯すること。また、その芝居。
·いちゃもん
(いわ)れのない言い掛かりを指す俗語.
類:●難癖(なんくせ)。例:「いちゃもんを付ける」
·意中の人(いちゅうのひと)
心の中で密かに目儅てと思っている相手。戀しく思っている相手。
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