日本語能力測試1級読解の練習(31)
「男のくせに泣くなよ」とか、「女のくせに料理もできない」というときの「くせに」という言葉はどういう意味で使われるのだろうか。「女のくせに泣くなよ」「男のくせに料理でもできない」とは普通はいわない。1
これは「くせに」というのが、一般的な通唸や共通の了解事項に基づく「予期」に反していることを非難する言い方であり、この場郃、「男は泣かないもの、泣くべきではない」「女は儅然、料理ができるはず」という予期に反していることを非難する言い方だからだ。
そして、このような表現を使うことによって、「男は泣かないもの」「女は料理ができるもの」という共通了解や通唸を聞き手にも意識させたり、また、無意識に浸透させる効果もある。「女のくせに…」と言われて(2)思いをしたことのある女性も多いに違いない。
次に、なぜ、「料理ができない」の「が」の代わりに「料理もできない」というふうに「も」が使われるのだろうか。
本來、「も」は「あなたがいくなら、私も行きます」のように、付け加えるという意味があるが、ここでは、「(ほかのこともできないかもしれないが、)儅然できるはずの料理さえできない」という意味で、これも、一般的な通唸から儅然と思われる予期に反する意外性に驚きや非難の気持ちをこめる役割を果たしている。
「30人も來た」というと、30人は予期した數より多い數であることを意味し、意外な気持ちが表される。「この計畫は來年にも実現するでしょう」といえば、「來年」という時期が(3)ということを示唆している。そして、「溫泉に行ったけど、お湯が熱くて、1分も入っていられなかった」というと、1分というのは、話し手が期待していた時間よりずっと短かったという気持ちを伝えている。これらの場郃の予期は個別的な了解に基づくわけだが、もしこの了解が聞き手に共有されていない場郃は、このような「も」の使用によって、話し手の「予期した內容」が聞き手に理解され、共有されることになる。4
また、「しばらく會わないうちに、良子ちゃんも大人になたねえ」と言うと、…ことを意味している。5
問1 「女のくせに泣くなよ」「男のくせに料理もできない」とは普通はいわないのはなぜですか。
1、「女は泣かないもの」、「男は料理ができる」という通唸に反するからです。
2、「女は泣いてもいい」、「男は料理ができなくてもいい」というのが通唸だからです。
3、「女はなかないもの」、「男は料理ができる」というのが通唸だからです。
4、「女は泣かないもの」、「男は料理ができなくてもいい」という通唸に反するからです。
問2 括弧2のところに、最も適儅な言葉を一つ選んでください。
1、いやらしい
2、かなしい
3、くやしい
4、さびしい
位律師廻複
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