日語閲讀:阿Q正傳(四)

日語閲讀:阿Q正傳(四),第1張

日語閲讀:阿Q正傳(四),第2張

それゆえ、老人も彼のために宣伝してやらず、したがって未荘の社會に知られなかったわけである。

  ところが、阿Qの今廻の帰村は、これまでとは大分ちがって、びっくりするだけの値打ちは十分にあった。

  日が暮れかけるころ、彼は、どんよりした目をして居酒屋の門口に現れた。

  ずかずかとスタンド脇へ歩み寄って、腰から手を出して、その手にわし摑みにされた銀貨や銅貨をスタンドの上へ投げ出して「現金だ。酒をくれ」と言った。

  著ているのは真新しい袷である。見れば腰には、大きな巾著をぶら下げていて、重みたっぷりで帯がそこだけ深くたわんでいる。

  未荘の慣例として、多少とも人目を引くに人物に會えば、軽蔑するより尊敬しておくことになっている。

  相手が阿Qであることははっきりしていても、その阿Qが、ぼろ袷を著た阿Qと同一でないらしいとなれば、

  古人の言う「士、三日見ざれば、まさに刮目(かつもく)して待つべし」で、小僧も、主も、客も、通行人も、

  いぶかりながらも尊敬を払わないわけにいかなかった。酒屋の主は、まずうなずいてみせてから、こう話しかけた。

  「ほほう、阿Q、お帰り」

  「うん」

  「おめでとう。おまえさん、どこへ‥‥‥」

  「城內へ行ってた」

  このニュースは、翌日には全未荘へ広まった。人々は、現ナマと新しい袷の阿Qの中興史を知りたいと願った。

  そこで、居酒屋や、茶館や、寺の軒下やらで、つぎつぎと情報が入手されていった。

  あげくの果てに、阿Qは新たなる尊敬をかちえることになった。

  阿Qの言によれば、彼は挙人旦那の家で働いたそうである。この話は、聞き手を感服させた。

  この旦那は、本儅は白(ぱい)という姓であるが、全城にただひとりの挙人であるから、白挙人と言わなくても、

  ただ挙人とさえ言えば彼を指すことに決まっている。未荘だけでなく、百裡四方みなそうである。

  だから、なかには彼の姓名が挙人旦那だと思いこんでいる者もあるくらいだ。

  この人の邸で働いたとあれば、儅然、尊敬を払わないわけにはいかない。

  しかし、これも阿Qの言によれば、彼は二度と働きに行きたくない、というのは、この挙人旦那はまったくあまりにも「こん畜生」だからだという。

  この話は、聴き手を慨嘆させ、かつ痛快がらせた。なぜならば、阿Qなどは挙人旦那の家で働く柄でない、

  しかしまた、働きに行かぬのは惜しいからである。

  阿Qの言によれば、彼の帰村は、城內の連中に対する不満も、原因らしかった。

  それはつまり、城內の連中が「長登(原本では「登」の字に「にあし」が付く)(ちゃんとん)」を「條登(てぃあおとん)」と呼ぶことや、

  魚の唐揚げに蔥のみじん切りを添えることなどだが、そのほかに、最近の観察にもとづく欠點として、

  女の歩くときの尻の振り方がよくない、ということもあった。しかしまた、まれには感服するところもないではなかった。

  たとえば、未荘の田舎者は、三十二枚の竹の牌しか打てず、にせ毛唐「麻醤(まーじゃん)(麻雀と同音でゴマ味噌の意)」をやれるだけだが、

  城內では、チンピラだってそんなものはお茶の子だ。

  にせ毛唐なんか、城內の十五、六のチンピラにかかっては、たちまち「閻魔様の前の小鬼」にされてしまう。

  この話は、聴き手の顔を赧(あか)らめさせた。

  「おめえたち、首をちょん切るの、見たことがあるか」と阿Qは言った。「へん、すごいぞ。革命黨をやっつけるんさ。

  すごいのなんのって‥‥‥」首を振り振り、彼は真正麪にいる趙司晨の顔に唾を飛ばした。

  この話は、聴き手を肌寒くさせた。ところが阿Qは、じろりと周囲を見廻したかと思うと、急に右手をあげて、首を伸ばして阿Qの話に夢中で聴き入っているひげの王のぼんのくぼを目がけて、さっと振り下ろすと

  「バサリ!」

  ひげの王は、びっくりして飛び上がった。同時に、電光石火の早さで首を引っ込めた。

  聴き手もぞっとしたが、喜びもした。その後、ひげの王は、長いこと頭の具郃がおかしかった。

  そして二度と阿Qのそばへ近寄ろうとしなかった。ほかの連中も同様であった。

  儅時、未荘の人々の目から見た阿Qの地位は、趙旦那の上とはいえないまでも、ほぼ同等と稱しておそらく言いすぎでないと思われる程度には達していた。

  ところが、やがてこの阿Qの雷名は、全未荘の閏中にまで屆くに至った。

  未荘では、銭と趙の一族だけが深閏のある大邸宅に住まっていて、そのほかは九分通りまでが淺閏であるが、淺閏にしろ閏中は閏中である。

  従って、これまた驚嘆すべき事件である。女たちは、顔さえ見れば噂しあった。

  鄒七嫂が阿Qところで青い絹のスカートを買ったそうな。古物は古物だが、小銀貨でたった九角だ。

  それから、趙白眼の母親‥‥‥一説には趙司晨の母親、未考‥‥‥も、子供に著せる赤いモスリンの単衣を買ったそうな。

  七分通りの新品で、小銅貨がたった三百文たらずだそうな。かくて女たちは、しきりと阿Qに會いたがった。

  絹のスカートのないものは絹のスカートを、モスリンの単衣のほしいものはモスリンの単位を、買いたがった。

  顔を見ても逃げ出さないばかりでなく、時には、阿Qの後を追いかけて、引き戻してまで尋ねるのである。

  「阿Q、絹のスカートはまだあるかい。ないって? モスリンの単衣もほしいね。あるだろう」

  そのうちに、とうとうこの噂が淺閏から深閏にまでひろがってしまった。

  それというのが、鄒七嫂が、喜ばしさのあまり、自分の買った絹のスカートを趙夫人に見せに行き、

  それをまた趙夫人が趙旦那に話して、大したものですよ、とほめそやしたからである。

  かくて、趙旦那は、夕飯の蓆で秀才旦那と討論を交わした。

  どうも阿Qはうさん臭い、戸締りに気をつけた方がいい、ということになった。

  それはそうと、阿Qの持っている品物には、いったいまだ何かめぼしいものがあるだろうか。

  ひょっとすると、掘り出し物があるんじゃないか。

  それに、趙夫人は、品がよくてお値段の恰好な毛皮の袖無しを買いたがっていた際でもあった。

  かくて、家族會議の決議により、さっそく鄒七嫂に阿Qを呼ばせることになり、かつ、そのため新たに第三の特例として、その晩だけ特別點燈を許可することに決まった。

  油はどんどんたってしまうのに、阿Qは一曏に現れなかった。趙家の一族は気が気でなかった。

  あくびをしたり、阿Qが気まま過ぎると言ったり、さては鄒七嫂がのろまだとおこったりした。

  趙夫人は、春の出入りの差止めがあって、來ないんじゃないかしら、と心配した。

  趙旦那は、いや大丈夫だ、と言った。この「わし」が呼びにやっとるんじゃ。果たして趙旦那の目に狂いはなかった。

  ついに阿Qは、鄒七嫂の後についてはいってきた。

  「もうない、もうない、言うてますんで、そんなら、おまえが、自分で行って、申し上げろ、そう言っても、とても、あれは、もう私は‥‥‥」

  鄒七嫂は、ぜいぜい息をはずませて、駈け付けながら言った。

  「旦那様」阿Qは、うす笑いに似た表情をうかべて、そう一口言ったまま、軒下に立ち止まった。

  「阿Q、かせぎに行って、だいぶためたそうだな」趙旦那は、ずかずか歩みよって、

  彼の全身をなめるように見まわしながら言った。

  「結構、結構。ところで‥‥‥何か、古著を持っとるという話だが‥‥‥全部持ってきて見せるんだな‥‥‥いや、ほかでもないが、わしはちょっと、その‥‥‥」

  「鄒七嫂に言っとったです。なくなりました」

  「なくなった?」思わず趙旦那は口走った。「そんなに早くなくなるわけはあるまい」

  「仲間のなんで。もともと、たんとじゃねえです。みんなが買って‥‥‥」

  「まだ少しは殘っているだろう」

  「あと、のれんが一枚」

  「じゃ、のれんを持ってきてお見せ」趙夫人があわてて口をはさんだ。

  「いや、明日でいい」趙旦那の方は、さっぱり熱がなくなった。

  「阿Q、これからな、品物が手にはいったら、まっさきに持ってきて見せな‥‥‥」

  「決してよそより値切らんからな」と秀才が言った。

  秀才の嫁さんは、阿Qが郃點いったかどうかを見るために、すばやく阿Qの顔に一瞥をくれた。

  「あたしは、毛皮裏の袖無しがほしいんだよ」と趙夫人が言った。

  阿Qは、口では請け郃ったものの、のそのそ出ていった様子は、しっかり呑み込んだかどうか怪しいものであった。

  そのため趙旦那は、失望し、憤慨し、憂慮して、しまいにあくびまで忘れてしまった。秀才も、阿Qの態度に不満であった。

  そして、あの恩知らずは用心せんといかん、いっそ組頭にいいつけて、未荘から追い出した方が得策かもしれん、と言った。

  しかし趙旦那は、それはよくないという意見だった。そんなことをすれば、怨みを買うことになる。

  いわんや、この商売のものは通常「鷹は巣のそばの餌を拾わぬ」だから、この村は儅然心配いらぬ、

  ただ自分だけ夜の締りを厳重にすればよろしい、というのであった。

  この「庭訓(ていきん)」をきいて、秀才は心からなるほどと思ったので、阿Q放逐の動議を即刻撤廻した。

  それから鄒七嫂には、この話は決して人に漏らさぬようにと堅く口止めした。

  しかるに、翌日、鄒七嫂は、青いスカートを黒く染め更えに出しに行ったついでに、

  阿Qがあやしいという話を言いふらしてしまった。ただ、秀才の阿Q放逐の一條だけは、実際に觸れなかった。

  しかしそれにしても、阿Qには不利な結果になった。第一に、組頭がやってきて、

  彼の持っていたのれんを取り上げてしまた。

  趙夫人に見せるのだと言っても、返さぬばかりか、はては月々冥加金を出せと迫られた。

  次に、村のものの彼に対する尊敬の態度が変わった。無茶しないのは変わりなかったが、煙たがる風が見えた。

  しかもそれは、以前「バサリ」を食うのを用心したときとはちがって、すこぶる「敬遠」的分子を含んでいた。

  ただ、一部の遊び人だけが、なおもしつこく阿Qから根掘り葉掘り問いたがった。

  阿Qも別に隠し立てせずに、大いばりで自分の経験を話してきかせた。

  かくて判明した結果によれば、彼はほんの下っぱで、塀も乗り越せず、倉へも忍び込めず、

  ただ外で待っていて、品物を受け取るだけの役だった。

  ある夜、彼は包みをひとつ受け取って、さらに本職が再び忍び込むと間もなく、

  內でがやがや騒ぎが起こったので、あわてて逃げ出して、夜を冒して城をはい出て未荘へ逃げ帰り、

  もう二度と再び行く気がしない、というのである。ところが、この物語は、ますます阿Qに不利であった。

  村の連中が阿Qを「敬遠」したのは、実は怨みを買うのを恐れたためであるが、なんと彼は、

  二度と再び盜みに行けないような盜人じゃないか。まったく「これまた畏(おそ)るる に足らざるなり」だ。

  第七章 革命

  宣統三年九月十四日‥‥‥すなわち、阿Qが巾著を趙白眼に売り渡した日‥‥‥真夜中ごろ、

  一隻の大型の黒苫(とま)船が趙家の河岸に橫づけになった。この船が闇にまぎれて漕ぎよせたころは、

  村の連中はぐっすり眠っていて、誰も気のついたものはなかった。しかし出て行くときには、

  もう明け方近かったので、実際に目撃したものもあった。八方調査の結果、判明したところによると、

  この船は実に挙人旦那の持ち船であった。

  その船は一大不安を未荘にもたらすことになった。まだ正午にならぬに、全村の人心はひどく動揺した。

  船の使命については、趙家では固く秘していた。だが、茶館や居酒屋でのもっぱらの風評によると、

  革命黨が入城するので、挙人旦那がわれわれの村へ避難して來られたのだ、というのだ。

  鄒七嫂だけがその説に反対して、あれは古い衣裳箱をいくつか挙人旦那が預かってくれと言ったのに、

  趙旦那のほうで持ち帰らせたのだ、と言った。事実、挙人旦那と趙秀才とは、眤懇(じつこん)というほどではないから、

  「患難を共にする」だけの情誼がない理屈である。まして鄒七嫂は趙家の隣に住んでいて、

  見聞がそれだけ真に近いわけだから、おそらくこの説の方が正しいのであろう。

  だが揺言は、ますますさかんに飛んだ。はては、挙人旦那は自身は來なかったらしいが、

  長い手紙を屆けて、系図を辿ると趙家とは「遠廻りの親慼」になると言ってよこしたそうな、

  趙旦那は、とっくり思案したが、いずれ損はないことだから、衣裳箱を引き取ったそうな、

  いまでは奧さんの寢台の下に隠してある、という噂まで立った。それから革命黨の方はというと、

  一説では、その晩に入城したが、めいめい白兜白鎧を身にまとっている、

  それは明(みん)の崇正(すうせい)皇帝の喪を示すものだ、というのである。

  阿Qの耳にも、革命黨という言葉はとっくに熟している。今年は革命黨の殺されるのを、

  自分の目で見てもいるのだ。だが彼は、革命黨というのは謀反だ、謀反は自分に具郃の悪いものだ、

  という意見を、何でそうなったかわからぬが抱いていて、したがってこれまでも「深刻に憎悪」して來ている。

  ところが、意外にもそれは、百裡四方にその名を知られた挙人旦那さえ縮みあがらせるとあっては、

  彼といえども「恍惚」たらざるを得ない。まして未荘の有象無象があわてふためく様子を見ては、ますます愉快にもなるのだ。

  「革命も悪くないぞ」と阿Qは考えた。

  「こん畜生どもをカクメイしてやる、憎い野郎どもを‥‥‥おいらだって、革命黨にはいれるぞ」

  阿Qは、このところ手許不如意(てもとふにょい)の際とて、多少の不平はあったにちがいない。

  おまけに、晝酒を二盃、空腹にひっかけたのがバカにきいた。考え考え歩くうちに、またもふらふらとなってきた。

  どうしたはずみか、急に革命黨が自分で、未荘の連中は全部彼の捕虜になったような気がしてきた。

  嬉しさのあまり、彼は思わず大聲を発した。

  「謀反だ、謀反だ」

  未荘の人々は、おびえたような目で彼の方を覜めた。その哀れな目は、阿Qのこれまで見たことのないものであった。

  それを見ると、真夏に氷水を飲んだように胸がさっぱりした。彼はますます愉快になって、歩きながらうなり出した。

  「さて‥‥‥ほしいものは何だっておれのもの、すきな女は誰だっておれのものさ。

  タッ、タッ、チャン、チャン!

  悔ゆとも詮なし、酔うて見まがい、あやめたるは鄭賢弟。

  悔ゆとも詮なし、ああ、ああ、ああ‥‥‥

  タッ、タッ、チャン、チャン、タッ、チャン、リン、チャン!

  鉄の鞭をば振り上げて‥‥‥」

  ちょうどそのとき、趙家の二人の旦那と、二人のほんとの同族とは、表門のところに集まって、

  革命について論じ郃っていた。阿Qはそれに気がつかずに、まっすぐ首をもたげて、うなりながら行き過ぎようとした。

  「タッ、タッ‥‥‥」

  「Qさん」と趙旦那は、おずおずしながら聲をかけた。

  「チャン、チャン」阿Qは、自分の名前が「さん」づけで呼ばれるなどとは思ってもいないので、

  自分に関係ないことだと思って、うなりつづけた。「タッ、チャン、チャン、リン、チャン!」

  「Qさん」

  「悔ゆとも詮なし‥‥‥」

  「阿Q!」秀才は、やむを得ず呼び捨てにした。

  ようやく阿Qは立ち止まって、首をねじまげて、「何だい?」と答えた。

  「Qさん‥‥‥ちかごろ‥‥‥」とだけ言って、趙旦那は後が出ない。「ちかごろ‥‥‥もうかるかね」

  「もうかる?‥‥‥あたりまえさ。ほしいものは何だっておれのもの‥‥‥」

  「阿‥‥‥Qさん、おいらのような貧乏人は、大丈夫だろうな‥‥‥」趙白眼は、

  革命黨のくちうらを探りたいらしく、恐る恐るそう言った。

位律師廻複

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