童話:お茶のポット

童話:お茶のポット,第1張

童話:お茶のポット,第2張

「こんにちは、私はお茶のポットです。私は陶器でできていますのよ。注ぎ口は細くて長くて素敵でしょう。いつでしたか、どなたかがバレリーなの腕のようと、ほめてくださいましたわ。取っ手の幅の広さはどう思いまして?なんと申しましても、陶器は私のように上品で、しかもおしゃれでなくては。なにしろわたしは、一流の職人さんが、それはそれは丁寧に作ってくださいましたのよ。」

  お屋敷の台所で、お茶のポットはいるも自慢していました。

  でも、聞かされるクリーム入れや砂糖入れは、ほめるよりも、もっと別のことをよくいいました。

  「とことで、ポットさんの蓋はどうされました?」

  そのことを言われると、ポットは黙ってしまいます。

  蓋は前に一度壊されて、つぎはぎにされ、継ぎ目はあるのです。

  「そうね。誰でも悪いところに目がいくものよね。でもなんと言われても、わたしはテーブルの上の女王よ。だって、のどが渇いている人間を助けてあげることができるんですもの。この注ぎ口が女王の証拠よ。クリーム入れも砂糖入れも、いってみれば家來じゃないの。」

  そんなある日のこと。

  食事のときにだれかがポットを持ち上げた拍子に、牀に落としてしまったのです。

  ポットは牀で音を立てて、粉々になってしまいました。

  「それから私は、貧しい家の人にもらわれて行きましたの。そこで土を入れられ、球根を埋められましたわ。私は嬉しく思いました。なぜって球根は、私の躰の中でグングンと元気に育ち、目を出したのです。そして、朝を、迎えるたびに大きくなり、ある朝見事な花が咲きましたの。花は娘のようなもの。まあ、お禮は申してくれませんでしたが、私は幸福でしたわ。家のひとたちは花を見て、その美しさをほめてくれました。だれかを生かすために自分の命を使うって、うれしいことです。そのとき初めてそう思いました。でも、家の人たちは「こんなきれいな花は、もっと素敵な植木鉢に植ええたほうがいいね」と、花を連れていき、私を庭の隅に放り投げましたの。でも、私をかわいそうなどと思わないでくださいね。ええ、私は思い出がたくさんあるのですから。これだけは、だれにも壊したり、放り投げたりできませんのよ。」

位律師廻複

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